不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

ふたつの友

友人には二つの傾向があると、私は思います。

先に行っておきますが、どちらも大切な、有難い友人です。

そういう意味でどちらに優位を付けるわけではありません。

多分、時と場合に応じて、どちらの友人も頼もしい存在であると思います。

また、これはあくまでたとえなので、一人で両方持っていることが、実際には多いとは思います。

それは何をか起った折に見えてきます。

一つは「私を見てくれる友人」。

他方は「私と見てくれる友人」。

諍いが起きたとき、まずは「お前が正しい、相手が悪い」と加勢してくれる友人。

自分に分が悪いときほどありがたいものです。

分が悪いときでも味方してくれる友人は、裏切ることはないでしょう。

もう一つは諍いが起きたとき、まずは「そりゃまずい、何とかして解決しよう」と言ってくれる友人。勝ち負けではなく、問題そのものを解決しようと尽力してくれる友人。

こういう友人は真理が見えています。アドバイスを受けるべき友人です。

どちらかに偏ったり、どちらかだけに頼ることは自分の心のバランスを崩します。

誰だって自分は正しいと思いたいですし、問題を解決したいと思います。

そういうときにどちらの友人もいることは頼もしいことです。

前者の類の友人で極めて優れているのは、機を見て正しくない自分に諌言してくれる友人。

後者の類の友人で極めて優れているのは、機を見て解決しかねる問題自体を放擲せよと言ってくれる友人。

ざっと見ですが、幸いにも私にはそういう友人たちに恵まれていると思います。本当に有難いことです。若い頃からの友人がいてくれることはとても価値がありますが、重歳毎に善い出会いに恵まれる場合もあります。私はそうでした。こういうのは仏縁だと思い、可能な限り感謝しています。もちろん、縁薄くならざるを得ない場合でも感謝を絶やさぬようにしたいものです。

平成二十五年文月十九日

不動庵 碧洲齋