その昔、アンデス山脈で旅客機が墜落した際、死んだ仲間を食べて生き延びたという事件がありました。
戦時中に冬の北海道沿岸で似たような事件もありました。
こういう事件に限らず、「善悪の識別」が正しくできるのは、立場を離れた、あくまで第三者だけに過ぎません。
例えば戦争で言えば、両者共に自らが善だと信じているから戦えるのです。
悪だと思って戦うのは特撮ヒーローに出てくる秘密結社だけです。
故に戦争がいつまで経っても終わらないわけです。
当事者は善悪で動いているわけではありません。
生存か否か、あるいは自らの信念に適うかどうか。
だから死体を食べても食べなくても正解です。
食べたくないのに食べても正解。
食べたかったのに食べないのも正解。
自分の信念で食べないのも正解。
生きていても、死んでしまっても正解。
そんなものだと思います。
平成二十四年師走十九日
不動庵 碧洲齋