不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

ひとつの事実をこねくり回す

違う部署に多分、重度の病気などの障害を持つ社員がいます。

定期的に病院に通えば仕事は問題なくできるようですが、やはり週に2.3回は午後早めに退社したり、時々休んだりしています。

平常でもやはり辛そうな場面もなきにしもあらず。

年は私よりも幾つか下ですから、多分30代終わりか40歳ぐらい? 独身のようです。

わがままいっぱいに育てられてきたのか、対人関係で少々のことでも我慢が出来ないようで、すぐに苛立たしく手元の作業が荒々しく乱暴になったり、平気で舌打ちをしたり、くわえ煙草や歩き煙草、社長に注意されても治らず、いわゆる典型的なアダルトチルドレンの様相です。

私とはそりが合わないのか、基本近くにいても全く会話無しです。やれやれ。

昔の私でしたら回し蹴りの1.2発は丁重に差し上げたかも知れませんが、そこは悲しいことに亀の甲より年の功、もっと別の見方をするようになりました。

彼の病気は一生治る確率がほぼないのだそうです。

そして通院必須、恋人もいそうにありません。車が趣味のようですが。まあ寂しいなぁ、と思わなくもありません。

若かりし頃の自分ならしたり顔で「ざまあみろ」とでも言ったかも知れませんが、逆にもし自分が同じ立場だったらと考えると恐ろしさに身震いします。

武芸をしているが故に身体的に病気にでもなったら、その同僚程度の悪態では済まされないかも知れません。あり得ない程に荒れて暴れて、とんでもなく嫌なヤツになる可能性大です。少々わがままなんて言うレベルではないような気もします。

それに比べたら少々わがままでも黙々と通院している同僚の方が遥かに立派なようにも思います。

正直言って私にはそれが出来る自信が全くありません。

病気になったからって甘えるんじゃねえよ、治らぬ病気でもこの程度なら忍耐強いよなぁ、今少し社会人としての自覚を持ってくれんか、このくらいは許してやろうよ、等々、彼という一人のまわりをぐるぐる回り、あーでもないこーでもないと、ひとつの事実をこねくり回している自分に、未熟さを感じます。

自他ではない別の視点、自分を省みない違う視点、そういう心の在り方を探すのも、なかなかの修行ではないかと思っています。そういう意味では不愉快に思うこと多々ある相手にでも感謝の気持ちを持つように心掛けています。

平成二十四年師走十日

不動庵 碧洲齋