不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

天皇陛下のお立場は?

今朝、私と息子で尖閣諸島のニュースを見ていたとき、息子は突然私に尋ねてきました。

「パパ、なんで天皇陛下は日本で一番偉い人なのに政治の力を持ってないの?」

9歳にしてはなかなか鋭い質問です。私はしばらく考えた後に、こんな風に答えました。

(まとめてあります)

憲法17条は720年、聖徳太子によって日本で最初に作られた憲法です。その第1条には「和を以て貴しと為す」という一番有名な文言が書かれています。

和の漢字は調和と日本を現す漢字として、現代に至っても用いられています。

調和の本質は「善悪」「正邪」「好嫌」といった相対的視点を嫌います。

晴れ:良い・台風:悪い、生:良い・死:悪い、雨:良い・洪水:悪い。こういう評価は人間だけの価値判断基準に過ぎません。むろん他の全ての生物はそんな判断基準を持ちません。現実の価値判断の真理は常に人間の叡智を超えており、そしてそれは人間のためではありません。(判断する、ということ自体間違いですが)

神話の時代から国のリーダーには善悪を超えた視点を持つことを期待されてきました。国のリーダーは常に自然と同じような判断基準で考えることを期待されてきました。幾つかの国はよく戦争について天皇を批難します。しかし天皇がほとんど直接的に軍事を指揮することができたのは3人の天皇、77年程度でした。(それでも立憲君主制の元であって、専制君主制の元ではありませんでが。)一方、日本の歴史は今年で2672年、125人の天皇によって、いまだひとつの皇統を継続しています。77年というのはごく一部に過ぎません。(だからといって看過するつもりもありませんが)

上記の理由から、伝統的に日本では次席の者が俗世的な責任を負うことになっています。次席というのは例えば将軍とか総理大臣に当ります。そして多くの日本国民は俗世的な評価を下さない天皇陛下を長い間信頼し尊敬し続けています。

もしこれが理解できれば、この条文もより理解できることでしょう。

日本国憲法

第1章 天皇

第1条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。

私にはこれが正しい制度なのかどうか本当に分かりません。ただ、この制度は現在まで2000年以上も続いているという事実があります。故にこの制度は日本国民にとってとても適切に違いありません。

・・・と、そんな話しをしていたら、会社に遅れそうになってしまいました(笑)。

息子は理解してくれたでしょうか? 今すぐでなくとも良いです。このような疑問を持ち続けることはとても大切だと思う次第です。

平成二十四年長月二十九日

不動庵 碧洲齋

*上記の意見はあくまで私個人の感想に過ぎませんので、ご了承下さい。