品性という言葉があります。
品という漢字の由来は二つあり、一つは口が三つある様、一つは物が三つある様という説です。
私はこんな風に考えます。
人が何か所作をする時、その人の性格が出てきます。
乱暴に積み重ねる人、丁寧に積み重ねる人、取りやすいように積み重ねる人、崩れにくいように積み重ねる人 などなど。
そういう所作の現れを私は品性だと信じています。
日本語でも英語でも使い分けがあります。
品性(character)と稟性(nature)。
前者が後天的な努力によるものだとしたら、後者は持って生まれた、もしくは幼少時の教育の結果でしょうか。
世に武芸に優れた人は割にいるように思います。
武芸関係の著書に素晴らしいことを書く方も少なからずいます。
もちろん、そんな著名な方と会う機会は滅多にありませんが、基本的に私は言葉でその人の品性を量らないようにしています。
言うまでもなくその人の所作で判断します。
禅でもそうですが、実際に今、行っている行動だけが全てです。
幻想や妄想、嘘偽りを潤沢に加味できる言葉とは違い、所作にそれらを加えることは至難の業です。
ましてやとっさの仕草や自然な仕草ではまず嘘は付けないものだと思います。
何故こんな事を書くのかと言えば、当流では世界各地から多くの門下生がやってきます。
大抵は英語でやりとりしますが、英語が母国語でない方も多く、そもそも英語が通じない方もいます。そんなときにその人の人柄を判断する一番の方法は所作から醸し出される品性です。国によって習慣は違いますが、品性は間違いなく気候や宗教、思想を超えた一定の方向性があります。
そんなことから所作やその人の態度で判断することが自然、身についてきました。
国際社会などという意味不明な社会が氾濫してますが、この品性は間違いなく異文化に於いても信頼を獲得できる、堅い方法ではないかと思います。そういう意味では日本文化における道徳規準は世界に冠たるものだと思う次第です。
平成二十四年卯月二十一日
不動庵 碧洲齋