我が黒衣
修行の汚れ
秘めるとも
武徳貶む
穢れ隠さず
辛卯師走廿日
不動庵 碧洲齋
【意訳】
私の黒の胴着は
修行の汚れを隠しますが、
武徳を貶める汚れは
隠すことはできません。
私は当流の黒い胴衣を着る時はいつも、もこの胴衣を身に付けている限りは修行の汚れは隠されるべきと確認します。
この汚れを知る必要があるのは自分だけだからです。
他人に知らせる必要は全くありません。
故に黒い胴衣を着るということは自分自身の修行の成果を秘匿する決意だと言うことができます。
もし、自分が一生懸命やっているんだぞ、と広く世間に知らしめたいなら、純白の胴衣でも着て散々汚し、大いに喧伝すればよいことです。
(ま、これはあくまで例え話ですから、実際に稽古するに当っては胴衣は清潔を保つようにしなければいけないことは言うまでもありません・笑)
とはいえ、この黒の胴衣を以てしても隠せない汚れというものがあります。
それは武徳を貶める汚れとでも言いましょうか。
その汚れは間違いなく、自身の武志をも毒し、いつの間にか落としがたい汚れとなって汚していきます。
この手の汚れについては落とすのも一苦労ですから、日々重々心していきたいものです。
当流の門下の方は、稽古前に胴衣を着る時、そんなことを思い返してみるのもよいかなと、ふと思った次第です。
SD111209 不動庵 碧洲齋