不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

男旅 その1

反町隆史の車のCMではないですが、息子と男だけの旅をしてみたいと、ずっと思っていました。 何と言っても息子は私の良き理解者ですから。 今回、ロシア旅行がやむなき事情でキャンセルになったため、それが実現しました。 今回の夏休みは非常に濃い夏休みだった上に、パソコントラブルに見舞われていたので、忘れないうちに書き留めたいと思います。 旅先は群馬県甘楽郡南牧村。 私が良く行く黒瀧山不動寺があるところです。 11日朝5時に息子と出発。 天気は曇りと晴れが半々でしたが、到着した頃はまずまずの天気でした。 登った山はこれ。
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立岩と呼ばれる山ですが、山と言うよりはモニュメントバレーのような岩。標高は高くなく、1,265m。 半分居眠りしていた息子も、見えてから麓に到着するまで絶句していました。 登山口に車が着くなり、「ムリムリ」と連発。 エエイ、ここまで来たら登るのじゃ! 私は以前、秋頃に単独で登ったことがありましたが、その時は風が非常に強く、かなりヤバかった気がします。 車を停めると早速出撃準備。 今回は夏場なので水は十分に持参。 私は計2L、息子は計1L持たせました。 少し失敗したのは足回り。 今回まっさら新しいエアー地下足袋でしたが、わずかに大きく、厚手の靴下を用意すべきでした。 私は基本、登山靴をほとんど使いません。 地下足袋です。 最近の地下足袋はエアー地下足袋などという便利なものがあり、下手に底が厚い高価な登山靴よりもずっと履き心地がよいです。 出発直前に麓に住んでいる老人が散歩がてらやってきて非常に貴重なアドバイスを頂きました・・・。 「マムシがよう出るから、必ずその杖を持っていくといい。」 確かに木箱に無造作に杖がたくさん放り込まれています。 息子またしても絶句・・・。 「ええと・・・噛まれたらどのくらい危険ですか?」 「ずっと放っておくと死ぬけどな。噛まれて山を下りてくるのも放っておくのと変わらんだろう。」 息子は箱に飛びついて、先が一番鋭利になっている杖を血眼で探しました。 「されば、参ろうか」 今回は標準時間の1.5倍を見積もってみましたが、正解でした。 崖に取り付くところまで普通なら1時間のところ、キッチリ1.5時間かかりました。 岩場に繋がるガレ場。もの凄い急斜面で、鎖が付いています。
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そしてガレ場の終わりがこんな感じ。
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このガレ場を登っている最中にもゴルフボール大の岩が何個もゴロゴロと落ちてきました。 で、どん詰まりじゃん、という感じのすぐ右横にある登山道がこれ。
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写真はちょっと場所の関係で正しい傾斜で撮影できなかったので、修正しました。 幅が大体30センチぐらいの鎖場が30mちょっと。 どんどん高くなってきていますし、踏み外したら高くなくても下がガレ場なので、よくて大けが、下手すると死にます。 もちろん杖はそこで放棄しました。 鎖場を昇り終えると多少、普通の山っぽい登山道になりますが、登山道と言っても、日本アルプスのような整備されたものではありません。 そもそも私はそんなところには率先して登りません。 なんとか道が判別できるような山です。 しばらくしてやっと、東側の岩の頂上に辿り着きました。 東岩山頂は畳2畳分もない程度の狭さですが、なかなかの絶景です。 東南から北西までが見られます。ただし足場が悪いので要注意。 目指す最高峰のある西岩はこんな感じに見えます。
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東岩から一旦下り、最高峰1,265mに到着。
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こちらは随分広く、ベンチもあります。 但し展望は北から南西に限られます。 息子もへとへとなので残りのおにぎりを食べ、まだ冷たい麦茶を飲みます。 こちらは精神的にすり切れ状態。 登山中、息子は5分ごとに「もう鎖場はないよね?」と確認してきます。 取りあえずここでエネルギーチャージして、違う道から下山。 反対側の方がやや楽とは言え、いきなり急激な下り坂。 登山道というよりは、岩に低い草木がへばりついているところを伝っていくような感じ。 写真はちょうど真北から見た立岩。岩に草木がへばりついているのが分かると思います。 しばらく尾根沿いを歩いて、岩壁にぶち当たりました。
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「あれ・・・道がない・・・」 いえ、よく見ると鎖が付いています。 70度以上の傾斜がある、ほとんど垂直に近い崖を登らねばならなくなりました。 前回行ったときもここを登ったはずですが、忘れていました。 高さ的には10m弱。 途中でトラバース(崖を横切ること)をしなければならないので、息子を連れた私には結構怖かったです。 それ以後は普通の登山道になり、次の目的地、威怒牟幾不動滝に着きました。
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威怒牟幾不動、これどう読むか知ってますか?多分初めて見る人が多いと思います。 これは「いぬむき」と読みます。 由来は学者さんたちが調べたそうですが、今のところ全く分かっていないそうです。 見ての通り、今は壊れたお堂の跡があるだけで、人によっては少々不気味にも映ります。
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不動明王の御加護を受けているからなのか、私と息子はそんな感じは受けませんでした。 現在、本尊は麓にある吉祥寺に安置されています。 この滝には不動明王の石像があるだけです。 もちろん私はお供え物をして線香を焚き、巡礼用の読経一式をしました。 ここからの景色もまた格別です。滝の裏側から外を眺めることができます。 滝は南面しているので日が良く照りつけていますが、滝の裏側なので何とも不思議なくらい涼しいです。 息子も一息つきました。 かなり高い垂直の崖の上から落ちてくる滝は本当に美しいですよ。
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江戸中期に吉祥寺の27代目の住職だった阿闍梨によって開かれ、大正時代ぐらいまでは栄えていました。 黒瀧不動尊、威怒牟幾不動尊、荒船不動尊はこの辺りでは有名な不動三尊で、修験道によってよく峰行が行われたそうです。 現在では威怒牟幾不動が一番、マイナーになっています。 威怒牟幾不動滝で水を少し分けて頂くことにしました。 後は下りです。 時間はかかりましたが、14時過ぎに登山口に辿り着きました。 驚いたことに他に誰もいません。つまりこの山は貸切状態でした。 装備を外して少し休むと、キャンプ場に直行。 キャンプ場は半村営のキャンプ場。村のずっと奥にあり、すぐ隣はもう長野県です。 なんもく村自然公園 http://www.nanmoku.ne.jp/modules/naturepark/index.php?content_id=1 非常に奥地にあるので、予め食糧や借りられないようなキャンプ用品は持参しなければなりませんが、もの凄く静かで美しい自然環境です。コテージやバンガローもあり、大きなお風呂もあります。その他にはテニスコートやなんと天体観測用の観測ドームまであります。大きな集会場もあるので大人数でもストレスなく利用できます。 南牧村はもう何度も行っていますが、このキャンプ場に行くのは初めてでした。 テントサイトよりはバンガローなどのキャンプがメインですが、これだけの設備があればまずはキャンプ場としては非常に優れたものだと思います。 この日はペルセウス流星群が極大日になるので、早く食べてゆっくりしたかったのですが、逆にテントを設営してもまだ時間があり、車で南牧村の道の駅に行きました。息子のたっての願いでアイスクリームを食べましたが、うまかったのなんのって。そこでは地元の人が作ったらしいパンと辛味噌をシソで巻いて揚げたシソ巻きを買って戻りました。 キャンプ場に戻るとお風呂に入りました。ちょうど他の親子が入れ違いで出ていったので、広い風呂も貸切状態でした。息子は気兼ねなく泳いでいました。 夕食は先ほどのパンとカップラーメン、シソ巻きでした。 段々日が落ちてきました。 テントの入り口を開いて寝そべると、ちょうど真北から天頂にかけて見ることができます。 やや雲が多かったため、たくさんは見られませんでしたが、私は1.2個の流星を見た後に疲れから爆睡してしまいました。息子はその後、もう数個見たそうです。2人でワクワクしながら夜空を眺める、男旅の醍醐味は夜まで続きました。 息子のスリリングな登山は翌日も続くのでした・・・
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キャンプ場から見えた夕日 SD110815 碧洲齋