私には1人、二つ違いの弟がいます。
小学校2年生の時に、エラくスパルタな教師が担任だったおかげで、筋金入りの勉強嫌いになりました。
一時は精神的な病気になり、入院もしました。もともと神経が細い方でした。
以後、勉強の方は地表すれすれの低空飛行を続け、高校進学もプライドの高い母が中学校に行って頭を下げたくらいでした。
高校の後は動植物の専門学校に行きましたが、ともあれ最後まで学業は振いませんでした。
勉強ができないこともあって、やはりいじめられました。
当時は自分もいじめられていたので、これ以上やっかいごとを俺に持ち込むな!という感じでした。
当時は私もいっぱいいっぱいでしたから。
そういう意味では本当にできの悪い弟で、いつも悩みの種でした。
弟には10歳ぐらいからずっと思い続けてきた夢がありました。
それは何か動物に関する仕事をすること。
牧場とかそんな感じでしょうか。
確か「あらいぐまラスカル」を観てからそんな風に思ったようでした。
実は弟は小学校の半ばぐらいまで、動物のぬいぐるみが手放せませんでした(暴露!)。
正直言って、弟は根性もありませんでした。
学校卒業後、半年ほど北海道の牧場で働いた後、家でフリーター生活を続けたり、一時、セレブ系の乗馬クラブで働いたりしていましたが、やはり実家に戻ってはお気楽なフリーター生活が続きました。
その間にカナダで語学留学したことは非常によい経験だったようで、自分の夢をより明確にしたようでした。
しかし家でフリーター生活をしていた時分は、さすがに親も時々怒り心頭で、進路について問い詰めたりすると、逆ギレしたりしていましたが、とにかく動物関係の仕事という夢はずっと持ち続けていたようです。
私も何度か強く言いました。
そのうち母が他界したり私が結婚したりと、家の中の環境が大きく変わってきました。
その時にさすがに厳しく言いましたが、ここにきてとうとう、弟もやっとというかスターターがかかったようでした。
コトバよりも環境の変化の方が彼にはよかったようです。
今は山梨県鳴沢村の乗馬クラブで働いているだけでなく、そこではそれなりに責任あるポジションのようです。
給料の割には仕事はきついようですが、やはりやりがいを取った弟はえらいと思わざるを得ません。
そういうところから何か得るものも大きいと思うのです。
先ほど届いたメールを読むと、(スタッフが少ないので)逆境にあってチャンスと捉え、尊敬できる人が近くにいて、私などの厳しい忠告に感謝していると言うことでした。
いやいや、想像以上に成長しているな。
今まで弟がライバルなどと思ったことはなかったのですが、俺もうかうかしておれんぞ。
将来的には海外の牧場でも働きたいようですが、今はアメリカ人のトレーナーが来ていて、英会話などもする機会もあるようです。
忍耐の末に運が上向くとはまさにこのことでしょう。
で、思うのです。
彼をバカにしていた同級生たちの一体何人が、自分が本当にしたかった仕事をしているのかと。
それ以前に弟のように確固たる夢を持っていた同級生が果たしてどのくらいいたのか。
夢を持っていた人は少なかったでしょうし、それを実現させている人はもっと少ないはずです。
それを考えるとき、弟の亀のように鈍い、しかし確固たる歩みには敬服せざるを得ません。
私自身も驚きですが、いつの間にかある意味バカにしていた弟の方が私よりもずっと自分の夢に忠実に進んでいます。
世渡り上手とか器用な人は多いと思います。
交渉術とか人間関係術などの本などを読み、小利口になって金を稼ぐことが立派だと思っている人もいます。
それだけにひたすら忠実に自分の夢を実現するために地道に努力する人は少ないと考えます。
乗馬クラブに勤めるようになってからは人間的に非常に成長したようにも感じます。
まあ、本人ももう不惑ですから、そうならねばならないのですが、それでも時々、彼の生き方には感心してしまうのです。
ま、本人の前ではなかなか言えないのですが、ウサギとカメのリアルバージョンと言うことで、最近は弟に対して少し爽やかな敗北感と同時に誇らしくも思うのでした。
乗馬は思う程敷居は高くありません。
また、宿泊施設などもあり家族でも十分に楽しめる場所ですので、ぜひ遊びに行ってみてください。
【パディーフィールド】
SD110620 碧洲齋