本来、耳は何でも聞くが、人の耳だけは違う。
静寂に在って聞き、人前に在って聞かぬことしましば。
本来、眼は何でも見るが、人の眼だけは違う。
虚無に在ってものを見、森羅万象を見ぬことしばしば。
人以外の動物は全てを見、全てを聞くのだと思う。
人だけが聞こえぬものを聞いたり、聞こえるものが聞けなかったり、
人だけが見えぬものを見たり、見えるものを見なかったりする。
それは、自我という檻の中にいる故ではないかと思う。
自我という檻の中にあって、しかも鍵を手にしながら苦しみ喘ぐ。
たぶん、檻の外が何なのかを知るべきなのかも知れない。
それが何なのか分かれば、手元の鍵を以て自らを檻の外に解き放てるのではないか。
出られないのではなく出る勇気がない、私を含めた世の人々を見て、そんな気がした次第です。
SD110524 碧洲齋