不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

侍 サムライ SAMURAI

昨夜は「隠し剣 鬼の爪」を

今日は「たそがれ清兵衛」を

それぞれ英語字幕付で観ました。

『あの場面はどんな訳し方しているんだろうか・・・』

等と考えながら観ていましたが、なかなかおもしろかったです。

両作品の台詞を英語字幕にしたのは

イアン・マクドゥーガル氏という方です。今し方ネットで調べました。

私はこの方のことはよく知らないのですが、まあまああそこまできめの細かい時代劇を、良く翻訳できたものだと感心しきり。

ただ、私だったらこういう風に訳すんだがなぁ・・・というのもありました。

まあ、マクドゥーガル氏の方が英語のプロ、翻訳のプロですから、私のセンスなどシロウトに近いのでしょうけど。

良く考えられているのは、あまりに文化のバックグラウンドを必要とするようなものの名前や事などは正確に訳さなくても後で説明になってくる手法というのが目を引きました。

えらくマイナーな単語もありましたし、「ほほう、この単語を持ってきたのか」というのもありました。

また、やはり諸子百家は中国語読みなんですね。当たり前か。

あ~、その昔、「ラストエンペラー」で日本語字幕を観たとき、孔子の弟子の「曽子」を道家の「荘子」と誤訳されていたのがありました。この辺はやや上級の一般常識なんですけどね~(と、当時中国思想にはまっていた私が思った事でした・笑)。

多分、英語の字幕などはかなり語彙量が必要になってくるのだと思います。

とはいえ、一箇所ツッコミ。

「成仏してください」というフレーズが何度か出ましたが、マクドゥーガル氏はこのように訳していました。

「May you rise to Buddha」

多分、マクドゥーガル氏は「ジョウブツ」を「上仏」だと思ったんでしょうね。

これは正確に訳すのであれば「May you become to Buddha」ですが、英語しか分からない方のためだったら

「depart in peace」がよいかと思いました。

「鬼の爪」で2度程、重要な場面で使われた全く同じ会話があります。

「それは、旦那様の言い付けですか」

「そうだ、俺の命令だ」

「それでは、しかたありませんね」

これの英訳はこの通りでした。

"Is that what you wish, sir?"

"Yes, that is my command."

"Then, I have no choice but to obey."

「言い付け」も「命令」も全く同じ意味なのですが、ヒロインの言葉の時は「wish」が使われています。

実はwish, 命令にも使われるんですね。

一応、公式にも使われる緩い命令のようです。

一方のcommandは軍隊とかにも使われる、公式の命令の意味です。

だから裏読みすれば

「それは旦那様のご命令ですか」

「いや、それ以上だ!」

何ともニクイ訳し方じゃありませんか。

この辺りはボキャブラリーの深い意味を知らないとできないですね。

将来、英語圏の女性を口説きたいと熱望している方がいましたら、是非ご参考ください(笑)。

SD110522 碧洲齋