不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

人種差別について

今日は朝から映画館に行きました。

何度かブログに書いた「太平洋の奇跡」の初日公開日だったからです。

ネタバレはしませんが、なかなか良くできていました。

あれは間違いなくアメリカでも公開することを狙って作られていますな。

英語が少しできて、アメリカの歴史にある程度詳しい人なら分かると思います。

フィクションなのか史実なのか分かりませんが、アメリカ軍側の準主人公役の大尉さんの出身は「ボストン」。

日本に留学経験があった、という触れ込みです。

南北戦争時代、一番奴隷解放に熱心だった場所こそがボストンです。

私はボストンに行ったことがあります。

あそこにも多くの黒人が住んでいますが、他の地域の黒人たちと全然違います。本物のプライドがあり、黒い肌に誇りを持っている気概がガンガンと伝わってきました。他の地域ではかなり怪しいですが、ボストンでは人種差別に対する憎悪のようなものがあります。

また、明治時代、岡倉天心がボストンにいたこともあり、東洋に非常に理解のある場所だと思います。

そういう土地柄出身の将校をアメリカ軍側に据えているという設定が憎いですね。

で、最初の上官はテキサスなまりの南部人(・・だったと思います、違ったらスミマセン)。だから「ジャップ」とコキ下ろし、それが普通でした。その対比などはアメリカの歴史を知っているとおもしろく感じることでしょう。

劇中、一度だけB-29が出てきました。私は本物のB-29のフライトを見ました。しかもこれまた本物の零戦と模擬空中戦をしているところを目にしました。あんな巨大なものが何百機もやってきたら、爆弾を落とす前に戦意喪失しそうです。大場大尉の絶望的な心境はよく分かります。

私は大場大尉が最後に言った言葉が印象的でした。

「無心になって戦っただけです。」

今、この歳になるまで武芸をしている自分にはこの言葉の奥深さがよく理解できます(理解したつもりです)。勝つとか負けるとかではなく、生きる死ぬでもない、一心に戦い尽すこと、これが軍人や士たる者の務めではないかと思います。

英語の会話の時は字幕になってしまっていますが、あれは原文を感じられた方がこの映画のより素晴らしいところを理解できると思います。

SD110211 碧洲齋