不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

武士の家計簿

武士の家計簿

毎月1日は映画の日ということで映画が1000円で見ることができます。さすがに正月早々観に行ったのは初めてでした。もっとも映画の値段に関してはまだまだ米国には敵いませんな。20年も前のしかもド田舎のカンザスの話ですが、週末ともなると最新作が1ドルで見ることができました。

武士の家計簿」か「最後の忠臣蔵」か、最後まで悩みましたが、ここ最近は藤沢周平映画ばかり見ていたので、幕末つながりで「武士の家計簿」にしました。よ~く考えたら原作になった本、あれ読んだことがあることを思い出しました。なかなかおもしろかったと記憶しています。

あとは仲間由紀恵さんが出ているから、というのもあります。仲間さん本当に好感の持てる美人ですよね。「ヤマト」の黒木メイサさんも美人でしたが、ああいうクールビューティー系より仲間さんの方がより好感が持てます。笑ったときの印象がいいですね。何と言っても和服を着ても違和感がないのがいいです。結婚式の時の姿は息を呑む程美しかったです。周囲の人からも「ほ~」という声が聞こえてきました。いまだアリアリと目に焼き付いています。あれだけでも十分にお金を払って観る価値ありです。あんな美人妻がいたどんな倹約でも喜んで協力してしまいそうですな(笑)。いやいや今でも贅沢はしてませんが。映画の中のことは今でも十分に通用する内容です。また堺雅人さんの演技も光ってました。あの人は何をやらせてもうまいです。大河ドラマ新撰組」を観たときからこの人うまいなと思っていました。

さすがに前田加賀藩ともなると、経理を司る部署だけでも150人以上いたとか。藤沢周平作品に出てくる「海坂藩」は7万石ちょっとでしたが、10人もいませんでした。前田家は本当に尊敬できます。豊臣秀吉の親友が、100万石のまま徳川の時代を生き延びたというのはこれはかなりすごいことだと思っています。私ならどんな手でも使ってお取り潰しにかからないと枕を高くして眠れない程の小心者です。前田家の人たちの誠実さと強固な意志、もちろん徳川家の英邁さもあったのだと思います。私は江戸時代の前田加賀藩を思う度に、敵にも通じる誠実さ、敵をも受け入れる度量の広さを心掛けたいといつも思っています。

実際、この時代、侍でも本当に剣術が使える人はごく一握りでした。知らない方は大きな誤解をしているかも知れませんが、侍といえども朝、城や役所に行って帳面を開き、民衆の対応をしたり算盤で計算したりと、今の役人と何も全く変わりません。刀なんか職場の往復に差すだけ。何かに書いてありましたが、ものぐさな侍は本身は家に置いておき、竹光を入れていたそうです。時代劇と違って江戸時代は治安が守られていましたし、そもそも使う機会などはほとんどありません。幕末、世の中が慌ただしくなって初めて、武士たちが剣術道場にどやどやと入る始末でした。

やはり江戸時代、数学や経理、自然科学などを体得した武士の方がずっと有利で安定した職にあったようです。経理関係ともなると、商家から養子をもらい受けることもあったとか。それでも幕末の武士の暮らしは大変なものです。なにせ世の中の物価は江戸幕府開城以後、少しずつとは言え上がり続けているのに、武士たちの禄はほとん変わりません。これでは貧するのも当然です。(この市場の常識も知る人は幕府においてはごく少数だったと聞きます)

とはいえ、江戸時代から多くの日本人は読み書き算盤ができるという強みがあり、民族の性質も相成って、明治時代への移行も他国と比べると驚く程に粛々と行われました。民度が高いというのは色々な意味がありますが、識字率で言うなら、幕末江戸の人口のうち、低く見積もっても5.6割の人が読み書きができたそうです。明治中頃のロンドンの識字率は3割から4割だったことを考えると、日本人の教養の高さが分かろうというものです。

武士の家計簿」是非お勧めです。

SD110102 碧洲齋