不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

42のこと

当流の先代宗家は高松寿嗣という方で、奈良県橿原市に住んでいました。

もちろん直接お会いしたことはありませんが、いくつかのエピソードからするともの凄い達人だったようです。戦前ぐらいまではそういう人は割といたのではないかと思います。多分現代日本ではそんな人はもういないのでしょう。残念ですが。

宗家は1958年頃から自宅のあった千葉県野田市から高松先生が住んでいた奈良県橿原市まで毎週末通いました。新幹線の開業が1964年ですから最初の6年間は少なくとも夜行列車などで通われたのだと思います。新幹線開業後は大幅に負担が減ったとは思いますが、野田市から東京へ、新大阪から橿原まではそれまた大変な苦労だったと思います。合計でそれが15年も続きました。

以前、宗家がよく「体力で3倍、仕事で3倍、精神力で3倍、他の人よりも強くした」というような事を口にしていました。体力は多分歳を重ねるに従って、上手い体の使い方をせよと言うことにもなるのでしょう。仕事で3倍というのは非常に重要です。当流に来る外国人たちは夏休みや冬休みでない普通の日に2週間とか休みを取ってきます。この辺り日本の福利厚生概念が結構遅れているなと思わざるを得ない部分です。幸いにして私の会社は比較的自由に有休が取れますが、これはかなり運がよい部類でしょう。お金に関してはサラリーマンの悲哀が漂います(笑)。

また、この物価の高い日本に来て稽古をするということはかなり大変なことだと思います。海外でビジネスで成功して、年に何度もやってくる人もいます。どういう収入かは問わなければ、年に何度もやってこられるというのは大したものです。ただ中には武道をメシのタネにしている人も大勢います。私個人の見解と断っておきますが、道徳的にいささか首肯しがたい人たちも見受けられます。ただ日本と海外の道徳観念は別なのかも知れません。

現宗家は42歳で高松先生から宗家を譲られました。

私は師が42歳の時に師事しました。

コジツケかもしれませんが、私も来年42歳になったらそのような後進に巡り会うのかなとも思います。(もちろん現行の門下諸君には多大なる期待はしてますが(笑)!)

個人的には「ミスターミヤギ&ダニエルサン」のような感じが理想ですが、まあそれはその時のお楽しみということで。

SD101026 碧洲齋