不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

代稽古のこと

先日、師が不慮の事故に遭いました。幸い大事には至りませんでしたが、年齢のこともあり1ヶ月は稽古を中断ということになりました。師事してから25年になりますが、これほどの大けがは初めてです。どうして怪我をしたのか、これを語ると門内の恥を晒してしまうので、やめておきます。多分、他流だったらまず普通はあり得ないような、信じがたいシチュエーションかも知れません。

で、師が不在の間の話しです。この1ヶ月間に12回稽古があり、これをどうやっていくのか、2人の兄弟子が師に伺いを立てました。その結果、私を含む古参3人が交代で代稽古せよとの沙汰あり。

な~んだ、そんなことか。はっはっはっ。

万事、深刻に考えないようにするのが常でしたが、数日後、ふと思い返すと急に不安になりました。俺の腕はそんなに裏打ちされたものか?だいたい自分の弟子ならともかく同門に「指南する」など、実はあまり考えたこともありません。

先週の土曜日、一つ上の兄弟子の代稽古に出ました。

兄弟子と言っても齢60近くです。正直に言って、今までその兄弟子がそんなにうまいとは思っていませんでしたが、ここに来てその指導力には脱帽しました。うまいです。師の動きをちゃんとフォローしています。弟弟子たちも顔色を見るに私と同じ事を考えていたようでした。海よりも深く、ものすごく反省。

歳寒くして松柏の凋むに後るるを知る、とは言ったものです。久しぶりに己の伸びきった天狗鼻をへし折られた思いでした。あ~こんなにまだ長かったんだ、というのが正直な感想。ほんのちょっと10代の自分に戻ったような感じがしました。

自分の眼力にはあまり信を置かない方がいいようです。本来、眼力などというものは願力の類ではないでしょうか。願ったり叶ったりしたいものしか目に映らないようにできているのかも知れません。恐るべし妄想の世界。

風邪気味で体調不良の今は、自らの不安と不信に苛まれていますが、代稽古デビューの12日までは止水明鏡の心意気で臨みたいと思います。

sd100506 碧洲齋