不動庵 碧眼録

武芸と禅を中心に日々想うままに徒然と綴っております。

師弟のこと

先日、久しぶりにベストキッドを借りてきて、息子と観ました。

公開された1984年当時、バブルの前と言うこともあってアメリカ人から見た日本人観に失笑を隠せませんでしたが、その2年後、まさか自分が「ダニエル」さんになるとは思いもよりませんでした。細かいところを言ったらきりがないほどにおかしな考証がありますが、実際に武道をされている方が観たら、一笑に付せられないものがあると思います。

そして自分が本当の師範になった今、またこれを見るとある意味頭を殴られたかのような新鮮さがあります。私は基本的に武芸に関しては世に広めるとか、教育の一環として普及させるとかいった志は持ち合わしていません。なにぶん武芸はキケンきわまりないですから、本当にやりたい人が一生懸命に探して(と言っても今はインターネットがあるので、笑っちゃうぐらい楽に探せますが)、師事すればよいと思っています。しかしベストキッドを観ると、人に教えるのも悪くないな・・・と感じることしばしばです。

ミヤギ先生の武芸観は日本人の目指しているものだと思います。ベストキッドの製作スタッフには驚くべき事に空手経験者がいなかったと聞きます。それでもあのようなテーマをうまく表現できていたことは驚きに値します。

私が今の師に出会ったのは、師が43歳、私がダニエルさんと同じ16歳の時でした。今私は40歳になってしまいました。もし3年後、もし同じように16歳の少年が入門してきたら、その少年の瞳に私はどんな風に映るのでしょうか。私の入門時の時の師と今の私を比べると、正直寒気と失笑とが交錯してしまいます。世の中に何か悪い冗談があるとすれば、これはその一つでしょう。とはいえ、16歳の時の私のような少年が今、入門してきたら、微笑みながら半死半生になるまでボコボコにしてしまいそうです。今思えばあんなクソ生意気なガキをよく、温かく迎えて錬成して頂いたかと思うと冷や汗が滝のように出てきます。

いつか、志を持って我が道場の武門を叩きに来る少年がいるかも知れません。

そしてその少年の瞳に映る自分が、すこしでもそれらしくなるように修練を重ねるのも、そんなに悪くないように思います。

SD100321 碧洲齋